« 倒れたご婦人 | トップページ | もう一人の私 »

2017年2月18日 (土)

新しい転換へ

私の内部に燃え続けていた灯が静かに消えていきました。
けれどももっと大きな灯が私の内部で燃えてきました。
もっと力強い、理性的な、健康的な核のような力です。
今ははっきりと書くことはできませんが、
現在の私は教会からは離れています。
原因はキリスト教の根幹にかかわることなので、
今はあえて言いません。
背教者ユリアヌスの心境です。
一年間の必死の探求の結果です。


私の心境に近い人が日本人にいないかと思ったとき、
高村光太郎がすぐに浮かんできました。
高村の宇宙観、自然観、至高的存在に対する畏怖と尊崇(宗教ではない)は、
今の私の心の内部を代弁している」ようです。

 

********

少し長いですが「道程」を読んでください。
高村光太郎の代表的な詩で若い頃から大好きでした。

 

「道程」

どこかに通じている大道を僕は歩いているのじゃない。

 

僕の前には道はない。

僕の後ろに道はできる。

道は僕のふみしだいて来た足あとだ。

だから

道の最端にいつでも僕は立っている。

 

何という曲がりくねり

迷い迷った道だろう

自堕落に消え、滅びかけたあの道

絶望に閉じ込められたあの道

 

ふり返ってみると

自分の道は戦慄に値する

支離滅裂な

またむざんなこの光景を見て

誰がこれを

生命の道と信ずるだろう

それだのに

やっぱりこれが生命に導く道だった

 

そして僕はここまで来てしまった

このさんたんたる自分の道を見て

僕は自然の広大な慈しみに涙を流すのだ

 

あのやくざに見えた道の中から

生命の意味をはっきりと見せてくれたのな自然だ

僕を引きまわしては目をはじき

もう此処と思うところで

さめよ、さめよと叫んだのは自然だ

これこそ厳格な父の愛だ

 

子供になりきったありがたさを僕はしみじみと思った

どんな時にも自然の手を離さなかった僕は

とうとう自分をつかまえたのだ

 

丁度そのとき事態は一変した

にわかに眼前にあるものは光を放射し

空も地面も沸くように動き出した

そのまに

自然は微笑をのこして僕の手から

永遠の地平線へ姿をかくした

 

そしてその気魄が宇宙に充ち満ちた

驚いている僕の魂は

いきなり「歩け」という声に貫かれた

 

僕は武者ぶるいをした

僕は子供の使命を全身に感じた

子供の使命!

 

僕の肩は重くなった

そして僕はもう頼る手が無くなった

無意識に頼っていた手が無くなった

ただこの宇宙に充ちている父を信じて

自分の全身をなげうつのだ

 

僕ははじめ一歩も歩けない事を経験した

かなり長い間

冷たい油の汗を流しながら

一つところに立ちつくしていた

 

僕は心を集めて父の胸に触れた

すると僕の足はひとりでに動き出した

不思議に僕はある自憑の境を得た

僕はどう行こうとも思わない

どの道を取ろうとも思わない

 

僕の前には広漠とした岩畳な一面の風景がひろがっている

その間に花が咲き水が流れている

石がありみないききとしている

僕はただあの不思議な自憑の督促のままに歩いてゆく

 

しかし四方は気味の悪いほど静かだ

恐ろしい世界の果てへ行ってしまうかと思うときもある

寂しさはつんぼのように苦しいものだ

僕はそのときまた父に祈る

父はその風景の間にわずかながら勇ましく同じ方へ歩いてゆく人間を僕に見せてくれる

同属を喜ぶ人間の性に僕は震え立つ

声をあげて祝福を伝える

そしてあの永遠の地平線を前にして胸のすくほど深い呼吸をするのだ

 

僕の眼が開けるに従って

四方の風景はその部分を明らかに僕に示す

生育のいい草の陰に小さい人間のうじゃうじゃはい回っているのも見える

彼らも僕も

大きな人類というものの一部分だ

 

しかし人類は無駄なものを棄てて腐らしても惜しまない

人間は鮭の卵だ

千万人の中で百人も残れば

人類は永遠に絶えやしない

棄て腐らすのを見越して

自然は人類のため人間を沢山作るのだ

 

腐るものは腐れ

自然に背いたものはみな腐る

僕はいまのところ彼らにかまっていられない

もっとこの風景に養われ育まれて

自分を自分らしく伸ばさねばならぬ

子供は父の慈しみに報いた気を燃やしているのだ

 

ああ

人類の道程は遠い

そしてその大道はない

自然の子供らが全身の力で拓いて行かねばならないのだ

歩け、歩け

どんなものが出てきても乗り越してゆけ

この光り輝く風景の中に踏み込んでゆけ

 

僕の前に道はない

僕の後ろに道は出来る

ああ、父よ

僕を一人立ちさせた父よ

僕から目を離さないで守る事をせよ

常に父の気魄を僕に充たせよ

この遠い道程のため



2017年2月18日

« 倒れたご婦人 | トップページ | もう一人の私 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1880059/69648040

この記事へのトラックバック一覧です: 新しい転換へ:

« 倒れたご婦人 | トップページ | もう一人の私 »